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上つ毛野佐野の舟橋取り離し
親は放くれど我は離るがへ

歌の意味
上野の佐野の舟橋を取り外すように、親は二人を引き離そうとするけれど、私は離れたりするものか。
鑑賞
巻第十四 東歌 3420

詞書は前の歌に続き「相聞」
 佐野の舟橋を取り外すように親が二人の仲を裂こうとしても、自分は決して離れないと誓う女性の歌である。親の反対に屈しない恋の強さが、力強く表されている。
 上野国歌の一首である。佐野の舟橋は烏川に船を並べて架けた橋とされ、後世には謡曲「船橋」の題材ともなった。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「上つ毛野」は上野国の古名で、上野国歌の一首として始まる。
 二句「佐野の舟橋」の「舟橋」は船を並べて板を渡した橋で、佐野の地名は第三千四百六首、第三千四百十八首にも見える。
 三句「取り離し」は橋を取り外すことで、初句からここまでが「放く」を導く序詞となる。
 四句「親は放くれど」の「放く」は引き離すの意、「ど」は逆接である。駿河国歌の第三千三百五十九首と同じく、親との対立がうたわれる。
 結句「我は離るがへ」の「がへ」は反語の東国方言で、離れたりするものかと結ぶ。本巻の第三千五百二首も同じ結句をもつ。

ふなはし:船を並べて板を渡した橋
さく:引き離す
がへ:反語を表す東国方言
出典
万葉集
前の歌
伊香保せよ奈可中次下思ひどろ くまこそしつと忘れせなふも
次の歌
伊香保嶺に雷な鳴りそね我が上には 故はなけども子らによりてぞ