古典和歌stream

下つ毛野みかもの山のこ楢のす
まぐはし子ろは誰が笥か持たむ

歌の意味
下野の三毳山の小楢のように愛らしいあの子は、いったい誰の食器を持つ、つまり誰の妻になるのだろう。
鑑賞
巻第十四 東歌 3424

詞書は前の歌に続き「相聞」
 三毳山の小楢の若葉のように美しい娘は、いったい誰の食事の世話をする妻になるのだろうと気にかける歌である。若々しい娘への憧れと、手の届かないかもしれないもどかしさがうかがわれる。
 本歌と次歌が下野国(現在の栃木県)の歌で、左注に「右二首下野国歌」とある。三毳山は現在の栃木県栃木市と佐野市にまたがる山である。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「下つ毛野」は下野国の古名で、下野国歌の一首目として始まる。上野国歌の「上つ毛野」に対して「下つ毛野」で始まる。
 二句「みかもの山の」は三毳山で、下野国の山である。
 三句「こ楢のす」の「こ楢」は小さな楢の木で、「のす」はのようにの意の東国方言である。初句からここまでが序詞となる。
 四句「まぐはし子ろは」の「まぐはし」は美しい、愛らしいの意である。
 結句「誰が笥か持たむ」の「笥」は食器で、誰の食器を持つかとは誰の妻になるかの意である。「か」は疑問の係助詞で「む」と呼応する。

こなら:小さな楢の木
まぐはし:美しい、愛らしい
け:食器
出典
万葉集
前の歌
上つ毛野伊香保の嶺ろに降ろ雪の 行き過ぎかてぬ妹が家のあたり
次の歌
下つ毛野阿蘇の川原よ石踏まず 空ゆと来ぬよ汝が心告れ