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志太の浦を朝漕ぐ船はよしなしに
漕ぐらめかもよよしこさるらめ

歌の意味
志太の浦を朝に漕ぐ船は、理由もなく漕ぐのだろうか。いや、きっとわけがあって漕いでいるのだろう。
鑑賞
巻第十四 東歌 3430

詞書は前の歌に続き「譬喩歌」
 志太の浦を朝早く漕ぐ船にはきっとわけがあるように、明け方に帰って行く恋人にも理由があるのだろうと推し量る歌である。朝帰りする男を船に見立てた、機知に富んだ譬喩歌である。
 左注に「右一首駿河国歌」とある。志太の浦は現在の静岡県焼津市、藤枝市付近の海岸とされる。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「志太の浦を」は駿河国の志太の浦で、第三千三百五十五首からの駿河国歌に続いて駿河の地名が詠まれる。
 二句「朝漕ぐ船は」は朝早く漕ぐ船で、明け方に帰る男をたとえる。
 三句「よしなしに」の「よし」は理由、わけの意で、理由もなくの意である。
 四句「漕ぐらめかもよ」の「らめかも」は反語で、理由もなく漕ぐだろうか、いやそうではないの意である。
 結句「よしこさるらめ」の「こさる」は「来たる」の意、または「こそあれ」の東国方言とされ、わけがあるのだろうと結ぶ。「よし」を三句と結句で繰り返す。

よし:理由、わけ
出典
万葉集
前の歌
遠江引佐細江のみをつくし 我れを頼めてあさましものを
次の歌
足柄の安伎奈の山に引こ船の 後引かしもよここばこがたに