薪伐る鎌倉山の木垂る木を
松と汝が言はば恋ひつつやあらむ
- 歌の意味
-
薪を伐る鎌倉山の枝の垂れた木を、「松」すなわち「待つ」とお前が言うなら、こうして恋い慕い続けていようか。
- 鑑賞
-
巻第十四 東歌 3433
詞書は前の歌に続き「譬喩歌」
鎌倉山の枝の垂れた木を「松」と言うなら、つまり「待つ」とお前が言ってくれるなら、こんなに恋に苦しまずにすぐ逢いに行くのに、とうたう歌である。「松」と「待つ」を掛けた機知が中心となっている。
左注に「右三首相模国歌」とあり、相模国の譬喩歌の最後の一首である。鎌倉は第三千三百六十五首、第三千三百六十六首にも詠まれた地名である。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「薪伐る」は薪を伐るの意で、「鎌」から「鎌倉」にかかる枕詞である。
二句「鎌倉山の」は鎌倉の山で、相模国歌の鎌倉の地名がここでも詠まれる。
三句「木垂る木を」の「木垂る」は枝葉の茂って垂れ下がる意である。
四句「松と汝が言はば」の「松」に「待つ」を掛ける掛詞である。字余りの句である。
結句「恋ひつつやあらむ」の「や」は反語で、恋い慕い続けていようか、いやすぐに行くの意で結ぶ。
たきぎこる:「鎌」から「鎌倉」にかかる枕詞
こだる:枝葉が茂って垂れ下がる
まつ:「松」に「待つ」を掛ける
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
足柄のわを可鶏山のかづの木の 我をかづさねも門さかずとも
- 次の歌
-
上つ毛野阿蘇山つづら野を広み 延ひにしものをあぜか絶えせむ