あぜと言へかさ寝に逢はなくにま日暮れて
宵なは来なに明けぬしだ来る
- 歌の意味
-
どうしたというのか、共寝もしないのに、日が暮れても宵には来ないで、夜が明けるころになってやって来るとは。
- 鑑賞
-
巻第十四 東歌 3461
詞書は前の歌に続き「相聞」
日が暮れても宵には来ず、夜が明けるころになってやって来る男をなじる女性の歌である。共寝もかなわない時刻に来る相手への不満が、方言を多く用いた激しい口調で表されている。
相聞の一首である。「あぜ」「なは」「しだ」など東国方言を多く含み、東歌らしい言葉づかいの典型とされる。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「あぜと言へか」の「あぜ」はなぜの意の東国方言で、どうしたというのかと問いかける。六音の字余りである。
二句「さ寝に逢はなくに」は共寝もできないのにの意で、八音の字余りである。
三句「ま日暮れて」の「ま」は接頭語で、日が暮れての意である。
四句「宵なは来なに」の「なは」は「には」の東国方言、「来なに」は来ないでの意である。
結句「明けぬしだ来る」の「しだ」は時の意の東国方言で、相模国歌の第三千三百六十三首の「待つしだす」にも見える。
あぜ:なぜの意の東国方言
しだ:時の意の東国方言
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
誰れぞこの屋の戸押そぶる新嘗に 我が背を遣りて斎ふこの戸を
- 次の歌
-
あしひきの山沢人の人さはに まなと言ふ子があやに愛しさ