巌ろの沿ひの若松限りとや
君が来まさぬうらもとなくも
- 歌の意味
-
岩山に沿って生える若松のように待っているのに、もうこれまでというのか、あなたは来てくださらない。心細いことだ。
- 鑑賞
-
巻第十四 東歌 3495
詞書は前の歌に続き「相聞」
岩山のそばに生える若松のように待ち続けているのに、もう終わりだというのか恋人は来てくれず、心細いとうたう女性の歌である。「松」に「待つ」を響かせ、来ない人を待つ不安が表されている。
相聞の一首である。上野国歌の第三千四百十首、第三千四百三十五首の「伊香保ろの沿ひの榛原」と同じく「沿ひの」の句を用いる。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「巌ろの」の「巌ろ」は岩山で、「ろ」は東国方言の接尾語である。
二句「沿ひの若松」は岩山に沿って生える若松で、「松」に「待つ」を響かせる。初句と二句が序詞となる。
三句「限りとや」の「限り」は終わり、これまでの意で、「や」は疑問の係助詞である。
四句「君が来まさぬ」は来てくださらないの意で、「や」の結びとして連体形で結ぶ。四句切れである。
結句「うらもとなくも」の「うらもとなし」は心細い、不安だの意で、「も」は詠嘆である。
いはほ:岩山、大きな岩
うらもとなし:心細い、不安だ
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
子持山若かへるでのもみつまで 寝もと我は思ふ汝はあどか思ふ
- 次の歌
-
橘の古婆の放髪が思ふなむ 心うつくしいで我れは行かな