紫草は根をかも終ふる人の子の
うら愛しけを寝を終へなくに
- 歌の意味
-
紫草は根を染め尽くすというのか。人の子のいとしいあの子とは、まだ共寝を終えていないのに。
- 鑑賞
-
巻第十四 東歌 3500
詞書は前の歌に続き「相聞」
紫草は根を染料として使い尽くされるというが、いとしいあの娘とはまだ共寝を遂げていないとうたう歌である。「根」と「寝」を掛けた言葉遊びの中に、満たされない恋の思いがこめられている。
相聞の一首である。紫草の根は紫色の染料とされ、東国はその産地として知られた。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「紫草は」は根を紫色の染料とする草である。
二句「根をかも終ふる」の「根」に「寝」を掛け、根を使い尽くすのかと問う。「かも」は疑問である。
三句「人の子の」は人の娘の意で、他家の娘をいう。
四句「うら愛しけを」の「うら愛し」は心からいとしいの意で、「け」は東国方言の形である。
結句「寝を終へなくに」の「寝」は共寝で、二句の「根」と掛詞をなす。「なくに」は打消の詠嘆である。
むらさき:根を紫色の染料とする草
ね:「根」に「寝」を掛ける
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
岡に寄せ我が刈る萱のさね萱の まことなごやは寝ろとへなかも
- 次の歌
-
安波峰ろの峰ろ田に生はるたはみづら 引かばぬるぬる我を言な絶え