安齊可潟潮干のゆたに思へらば
うけらが花の色に出めやも
- 歌の意味
-
安齊可潟の潮が引いた干潟のように、ゆったりと思っているのなら、うけらの花のように顔色に出したりするだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十四 東歌 3503
詞書は前の歌に続き「相聞」
安齊可潟の干潟のようにゆったりした気持ちでいられるなら、うけらの花のように恋心を顔に出したりはしないのに、とうたう歌である。抑えきれずに表に出てしまう恋の激しさを、反語によって逆に示している。
相聞の一首である。安齊可潟は所在未詳の干潟である。武蔵国歌の第三千三百七十六首、第三千三百七十九首と同じく「うけらが花」を詠み、第三千三百七十六首の「色に出なゆめ」と同じく恋が色に出ることをうたう。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「安齊可潟」は所在未詳の干潟である。
二句「潮干のゆたに」の「ゆたに」はゆったりとの意で、潮が引いた干潟の広々としたさまに寄せる。初句と二句が序詞となる。
三句「思へらば」の「らば」は仮定で、思っているのならばの意である。
四句「うけらが花の」は第三千三百七十六首、第三千三百七十九首と同じ句で、武蔵野の景物とされたおけらの花をいう。
結句「色に出めやも」の「めやも」は反語で、顔色に出したりするだろうかと結ぶ。
ゆたに:ゆったりと
うけら:キク科のおけら。地味な花を咲かせる
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
我が目妻人は放くれど朝顔の としさへこごと我は離るがへ
- 次の歌
-
春へ咲く藤の末葉のうら安に さ寝る夜ぞなき子ろをし思へば