春へ咲く藤の末葉のうら安に
さ寝る夜ぞなき子ろをし思へば
- 歌の意味
-
春に咲く藤の葉先のように、心安らかに寝る夜はない。あの子のことを思うと。
- 鑑賞
-
巻第十四 東歌 3504
詞書は前の歌に続き「相聞」
春に咲く藤の葉先の「うら」から「うら安」を導き、恋人を思うと心安らかに眠れる夜がないとうたう歌である。春の藤の穏やかな景と、眠れぬ夜の苦しみとの対比が印象的である。
相聞の一首である。同音を重ねて次の句を導く序詞の技法が用いられている。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「春へ咲く」の「春へ」は春のころの意である。
二句「藤の末葉の」の「末葉」は葉の先で、「うら」の音から「うら安」を導く。初句と二句が序詞となる。
三句「うら安に」の「うら安」は心安らかの意である。
四句「さ寝る夜ぞなき」の「ぞ」は係助詞で、連体形「なき」と呼応する。四句切れである。
結句「子ろをし思へば」の「し」は強意で、倒置によって眠れない理由を最後に示して結ぶ。
うらば:葉の先
うらやす:心安らか
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
安齊可潟潮干のゆたに思へらば うけらが花の色に出めやも
- 次の歌
-
うちひさつ宮能瀬川のかほ花の 恋ひてか寝らむ昨夜も今夜も