新室のこどきに至ればはだすすき
穂に出し君が見えぬこのころ
- 歌の意味
-
新しい家を建てて祝う蚕飼いの時期になると、はっきりと思いを表したあなたが見えないこのごろである。
- 鑑賞
-
巻第十四 東歌 3506
詞書は前の歌に続き「相聞」
新しい室で蚕を飼う忙しい季節になると、あれほどはっきりと恋心を表していた恋人が姿を見せなくなったと嘆く女性の歌である。農事の暦と恋の移ろいとが重ねられている。
相聞の一首である。「こどき」は蚕飼いの時期とする説、新室の祝いの時とする説などがあり、定まらない。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「新室の」の「新室」は新しく作った建物で、蚕を飼う室とする説がある。
二句「こどきに至れば」の「こどき」は蚕飼いの時期とされ、六音の字余りである。
三句「はだすすき」はすすきの穂で、「穂に出」にかかる枕詞である。
四句「穂に出し君が」の「穂に出」は思いをはっきり表すことで、すすきの穂が出ることに重ねる。
結句「見えぬこのころ」は見えないこのごろの意で、体言止めで結ぶ。
にひむろ:新しく作った建物
こどき:蚕飼いの時期とされる
ほにづ:思いをはっきり表す
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
うちひさつ宮能瀬川のかほ花の 恋ひてか寝らむ昨夜も今夜も
- 次の歌
-
谷狭み峰に延ひたる玉葛 絶えむの心我が思はなくに