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青嶺ろにたなびく雲のいさよひに
物をぞ思ふ年のこのころ

歌の意味
青い峰にたなびく雲がためらうように、思い迷って物思いにふけることだ。この一年のこのごろは。
鑑賞
巻第十四 東歌 3511

詞書は前の歌に続き「相聞」
 青い峰にたなびいて動かない雲のように、心が定まらず思い悩む日々を送っているとうたう歌である。山にかかる雲のたゆたいが、迷う恋心と重なっている。
 相聞の一首で、雲の一連の二首目である。次歌も「青嶺ろに」「いさよふ雲」の語を用い、二首が対をなしている。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「青嶺ろに」の「青嶺ろ」は青い峰で、「ろ」は東国方言の接尾語である。次歌の三句にも同じ語が見える。
 二句「たなびく雲の」はたなびく雲で、前歌の「み空行く雲」に続く雲の歌である。
 三句「いさよひに」の「いさよひ」はためらうこと、進まずにとどまることで、初句からここまでが序詞である。
 四句「物をぞ思ふ」の「ぞ」は係助詞で、連体形「思ふ」と呼応する。
 結句「年のこのころ」はこの一年のこのごろの意で、体言止めで結ぶ。

あをねろ:青い峰
いさよふ:ためらう、進まずにとどまる
出典
万葉集
前の歌
み空行く雲にもがもな今日行きて 妹に言どひ明日帰り来む
次の歌
一嶺ろに言はるものから青嶺ろに いさよふ雲の寄そり妻はも