対馬の嶺は下雲あらなふ可牟の嶺に
たなびく雲を見つつ偲はも
- 歌の意味
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対馬の峰には低い雲はかからない。可牟の峰にたなびく雲を見ながら、故郷をしのぼう。
- 鑑賞
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巻第十四 東歌 3516
詞書は前の歌に続き「相聞」
防人として赴いた対馬の峰には低くかかる雲がないので、可牟の峰にたなびく雲を見ながら故郷をしのぼうとうたう歌である。前歌で恋人が勧めた「雲を見つつ偲ぶ」ことを、遠い対馬で実践する姿がうかがわれる。
相聞の一首で、雲の一連の七首目である。対馬は防人が派遣された地で、東国から送られた防人の歌と考えられる。前歌の「見つつ偲はせ」に対して、本歌は「見つつ偲はも」と結び、勧めと応答の関係をなしている。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「対馬の嶺は」は対馬の峰で、六音の字余りである。
二句「下雲あらなふ」の「下雲」は低くかかる雲、「なふ」は打消の東国方言で、八音の字余りである。
三句「可牟の嶺に」の「可牟の嶺」は対馬の山とされるが、所在は定まらない。
四句「たなびく雲を」はたなびく雲で、第三千五百十一首の「たなびく雲」と同じ語である。
結句「見つつ偲はも」の「偲はも」は「偲はむ」の東国方言で、前歌の「偲はせ」と呼応して結ぶ。
したぐも:低くかかる雲
なふ:打消を表す東国方言
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我が面の忘れむしだは国はふり 嶺に立つ雲を見つつ偲はせ
- 次の歌
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白雲の絶えにし妹をあぜせろと 心に乗りてここば愛しけ