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水久君野に鴨の這ほのす子ろが上に
言緒ろ延へていまだ寝なふも

歌の意味
水久君野で鴨がはうように、あの子に言葉をかけ続けて、まだ共寝をしていないことだ。
鑑賞
巻第十四 東歌 3525

詞書は前の歌に続き「相聞」
 水久君野で鴨がよちよちとはうように、恋人に言葉をかけ続けているが、まだ共寝はしていないとうたう歌である。鴨の歩みに、なかなか進まない恋のもどかしさが重ねられている。
 相聞の一首で、前歌に続いて鴨を詠む。水久君野は所在未詳の地名である。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「水久君野に」は所在未詳の野で、地名を示して始まる。
 二句「鴨の這ほのす」の「這ほ」は「這ふ」、「のす」は「なす」の東国方言で、鴨がはうようにの意である。初句と二句が序詞となる。
 三句「子ろが上に」はあの子の身の上にの意で、字余りの句である。
 四句「言緒ろ延へて」の「言緒ろ」は言葉をつなぎ続けることとされ、「延へ」は長く延ばすの意である。
 結句「いまだ寝なふも」の「なふ」は打消の東国方言で、まだ共寝していないの意である。「も」は詠嘆である。

ことをろ:言葉をつなぎ続けることとされる
なふ:打消を表す東国方言
出典
万葉集
前の歌
まを薦の節の間近くて逢はなへば 沖つま鴨の嘆きぞ我がする
次の歌
沼二つ通は鳥が巣我が心 二行くなもとなよ思はりそね