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己が命をおほにな思ひそ庭に立ち
笑ますがからに駒に逢ふものを

歌の意味
自分の命をいいかげんに思ってはいけない。庭に立ってほほえむだけで、馬に乗った人に逢えるのだから。
鑑賞
巻第十四 東歌 3535

詞書は前の歌に続き「相聞」
 自分の命を粗末に思うな、庭に立ってほほえんでいるだけで、馬に乗った恋人がやって来るのだからと、恋に悩む娘を励ます歌である。思い詰める娘をいたわる、温かいまなざしが感じられる。
 相聞の一首で、馬の歌が続く。難解な語を含み、解釈には諸説がある。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「己が命を」の「己が命」は自分の命の意とされ、「を」を「緒」とみて命と解する。
 二句「おほにな思ひそ」の「おほに」はいいかげんに、「な…そ」は禁止である。字余りの句で、二句切れである。
 三句「庭に立ち」は庭に立っての意である。
 四句「笑ますがからに」の「笑ます」はほほえみなさる、「がからに」はだけでの意である。
 結句「駒に逢ふものを」は馬に乗った人に逢えるのだからの意で、「ものを」は詠嘆である。

を:命の意とされる
おほに:いいかげんに
ゑます:ほほえみなさる
出典
万葉集
前の歌
赤駒が門出をしつつ出でかてに せしを見立てし家の子らはも
次の歌
赤駒を打ちてさ緒引き心引き いかなる背なか我がり来むと言ふ