古典和歌stream

広橋を馬越しがねて心のみ
妹がり遣りて我はここにして

歌の意味
広い橋を馬で越えることができずに、心だけをいとしい人のもとへ送って、私はここにいる。
鑑賞
巻第十四 東歌 3538

詞書は前の歌に続き「相聞」
 広い橋を馬で渡ることができず、心だけを恋人のもとへやって、自分はこちらに取り残されているとうたう歌である。体は行けず心だけが通うもどかしさが表されている。
 相聞の一首で、馬の歌が続く。左注に或本の歌の初句、二句として「小林に駒を馳ささげ」を記す。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「広橋を」の「広橋」は丸太を並べた幅の広い橋とされる。
 二句「馬越しがねて」の「がねて」は「かねて」の東国方言で、越えかねての意である。
 三句「心のみ」は心だけをの意で、体と心の対比を示す。
 四句「妹がり遣りて」の「がり」は人のもとへの意で、第三千五百三十六首の「我がり」と同じ語である。
 結句「我はここにして」は私はここにいての意で、体は残されたままであることを示して結ぶ。

ひろはし:幅の広い橋とされる
がり:人のいるところ、もと
出典
万葉集
前の歌
くへ越しに麦食む小馬のはつはつに 相見し子らしあやに愛しも
次の歌
あずの上に駒を繋ぎて危ほかど 人妻子ろを息に我がする