あずの上に駒を繋ぎて危ほかど
人妻子ろを息に我がする
- 歌の意味
-
崖の上に馬をつないでおくように危ないけれど、人妻であるあの子を命がけで思っていることだ。
- 鑑賞
-
巻第十四 東歌 3539
詞書は前の歌に続き「相聞」
崩れやすい崖の上に馬をつなぐように危ういことだが、人妻である女性を命のように思わずにはいられないとうたう歌である。許されない恋への危うさと、それでも抑えられない思いとが表されている。
相聞の一首で、馬の歌が続く。次歌も「あず」と「人妻子ろ」を詠み、二首は一組の類歌である。人妻への恋は第三千四百七十二首にも詠まれる。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「あずの上に」の「あず」は崩れやすい崖とされる。次歌の「あずへ」と同じ語である。
二句「駒を繋ぎて」は馬をつないでの意で、初句と二句が序詞となる。
三句「危ほかど」の「危ほかど」は「危ふけれど」の東国方言で、危ないけれどもの意である。
四句「人妻子ろを」は人妻であるあの子の意で、次歌の四句と同じである。
結句「息に我がする」の「息に」は命のように、命がけでの意とされる。
あず:崩れやすい崖とされる
いき:命
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
広橋を馬越しがねて心のみ 妹がり遣りて我はここにして
- 次の歌
-
左和多里の手児にい行き逢ひ赤駒が 足掻きを速み言問はず来ぬ