あすか川下濁れるを知らずして
背ななと二人さ寝て悔しも
- 歌の意味
-
あすか川の底が濁っているのを知らないで、あの人と二人で共寝をして悔しいことだ。
- 鑑賞
-
巻第十四 東歌 3544
詞書は前の歌に続き「相聞」
あすか川の川底が濁っているのに気づかなかったように、相手の心の奥の不実を知らずに共寝をしてしまい悔しいとうたう女性の歌である。うわべの澄んだ流れと底の濁りとの対比が、裏切られた恋の痛みを表している。
相聞の一首である。あすか川は大和の飛鳥川とする説と、東国の川とする説とがある。次歌も「あすか川」で始まり、二首が並ぶ。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「あすか川」は川の名で、次歌も同じ初句で始まる。
二句「下濁れるを」の「下」は川底、心の奥の意で、川の底の濁りに相手の心の不実を重ねる。
三句「知らずして」は知らないでの意である。
四句「背ななと二人」の「背なな」は恋人を親しんで呼ぶ東国方言である。
結句「さ寝て悔しも」は共寝をして悔しいことよの意で、「も」は詠嘆である。
せなな:夫や恋人を親しんで呼ぶ東国方言
した:底、心の奥
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
むろがやの都留の堤の成りぬがに 子ろは言へどもいまだ寝なくに
- 次の歌
-
あすか川堰くと知りせばあまた夜も 率寝て来ましを堰くと知りせば