古典和歌stream

あぢの棲む須沙の入江の隠り沼の
あな息づかし見ず久にして

歌の意味
あじ鴨の住む須沙の入江の隠れた沼のように、ああ、ため息がつかれることだ。長く逢わないでいて。
鑑賞
巻第十四 東歌 3547

詞書は前の歌に続き「相聞」
 あじ鴨の住む須沙の入江の奥にひっそりとある沼のように、思いを内に秘めてため息ばかりついていると嘆く歌である。久しく逢えない恋人への思いが、こもった水のよどみに重ねられている。
 相聞の一首である。須沙は所在未詳の地名である。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「あぢの棲む」の「あぢ」はトモエガモなどの鴨で、水鳥の住む入江を示す。
 二句「須沙の入江の」は須沙の入江で、所在未詳の地名である。
 三句「隠り沼の」の「隠り沼」は周りを囲まれて水の流れ出ない沼で、思いを内にこめることをたとえる。初句からここまでが序詞である。
 四句「あな息づかし」の「あな」はああという感動詞、「息づかし」はため息が出るの意である。
 結句「見ず久にして」は長く逢わないでいての意で、倒置によって理由を最後に示す。

あぢ:トモエガモなどの鴨
こもりぬ:周りを囲まれて水の流れ出ない沼
いきづかし:ため息が出る
出典
万葉集
前の歌
青柳の張らろ川門に汝を待つと 清水は汲まず立ち処平すも
次の歌
鳴る瀬ろにこつの寄すなすいとのきて 愛しけ背ろに人さへ寄すも