悩ましけ人妻かもよ漕ぐ舟の
忘れはせなないや思ひ増すに
- 歌の意味
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心を悩ませる人妻であることよ。漕ぐ舟が進んで行くように、忘れはしないで、ますます思いがつのるばかりなのに。
- 鑑賞
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巻第十四 東歌 3557
詞書は前の歌に続き「相聞」
心を悩ませる人妻であることよ、漕ぐ舟が先へ先へと進むように忘れることはできず、思いはますますつのるばかりだとうたう歌である。許されない恋の苦しさが、率直に表されている。
相聞の一首である。人妻への恋は第三千四百七十二首、第三千五百三十九首、第三千五百四十一首にも詠まれ、東歌に繰り返し現れる主題である。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「悩ましけ」の「悩ましけ」は「悩ましき」の東国方言で、心を悩ませるの意である。
二句「人妻かもよ」の「かもよ」は詠嘆で、二句切れである。第三千五百三十九首、第三千五百四十一首の「人妻子ろ」と同じく人妻をうたう。
三句「漕ぐ舟の」は漕ぐ舟で、先へ進むことから思いが増すことを導く。
四句「忘れはせなな」の「せなな」は「せずに」の東国方言で、忘れはしないでの意である。
結句「いや思ひ増すに」の「いや」はますます、「増す」は思いがつのる意で、字余りの句である。
なやまし:心を悩ませる、苦しい
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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潮船の置かれば愛しさ寝つれば 人言繁し汝をどかもしむ
- 次の歌
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逢はずして行かば惜しけむ麻久良我の 許我漕ぐ船に君も逢はぬかも