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防人に立ちし朝開の金戸出に
たばなれ惜しみ泣きし子らはも

歌の意味
防人として旅立った夜明けの門出の時に、手を離すのを惜しんで泣いた妻は、今ごろどうしているだろう。
鑑賞
巻第十四 東歌 3569

詞書は前の歌に続き「防人歌」
 防人として出立した夜明け、家の門口で手を離すのを惜しんで泣いた妻を、旅の空で思い出す歌である。別れの朝の具体的な情景が、深い哀切をもって描かれている。
 防人歌の一首である。防人は筑紫などの守りに東国から送られた兵士で、巻二十には多くの防人歌が収められている。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「防人に」は防人として、の意で、防人歌の主題を示す。
 二句「立ちし朝開の」の「朝開」は夜明け、明け方の意である。字余りの句である。
 三句「金戸出に」の「金戸出」は家の門を出ること、門出をいう。第三千五百三十首の「金門」と同じく門をさす。
 四句「たばなれ惜しみ」の「たばなれ」は手を離すことで、「惜しみ」は惜しんでの意である。
 結句「泣きし子らはも」の「はも」は詠嘆で、泣いた妻を思いやって結ぶ。第三千五百三十二首、第三千五百三十四首の「家の子らはも」と同じ結びの型である。

さきもり:筑紫などの守りに送られた兵士
あさけ:夜明け、明け方
たばなれ:手を離すこと
出典
万葉集
前の歌
後れ居て恋ひば苦しも朝猟の 君が弓にもならましものを
次の歌
葦の葉に夕霧立ちて鴨が音の 寒き夕し汝をば偲はむ