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己妻を人の里に置きおほほしく
見つつぞ来ぬるこの道の間

歌の意味
自分の妻をよその村に置いて、心も晴れずに振り返りながらやって来たことだ。この道のりの間じゅう。
鑑賞
巻第十四 東歌 3571

詞書は前の歌に続き「防人歌」
 自分の妻をよその里に残してきて、気がかりで晴れない心のまま振り返りつつ道を来たとうたう防人の歌である。妻を他人の中に置いて来た不安が、道中ずっと続く重い心として表されている。
 防人歌の最後の一首である。妻を人の里に置くとは、夫と離れて暮らす妻の身を案じたものと解されている。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「己妻を」の「己妻」は自分の妻の意で、「おの」は自分のの意である。
 二句「人の里に置き」は他人の里に置いての意で、字余りの句である。
 三句「おほほしく」の「おほほしく」は心が晴れず、ぼんやりと気がかりなさまをいう。
 四句「見つつぞ来ぬる」の「ぞ」は係助詞で、連体形「ぬる」と呼応する。
 結句「この道の間」は道中ずっとの意で、八音の字余りである。倒置によって道のりの長さを最後に示す。

おのづま:自分の妻
おほほし:心が晴れず、気がかりだ
出典
万葉集
前の歌
葦の葉に夕霧立ちて鴨が音の 寒き夕し汝をば偲はむ
次の歌
あど思へか阿自久麻山の弓絃葉の ふふまる時に風吹かずかも