古典和歌stream

小里なる花橘を引き攀ぢて
折らむとすれどうら若みこそ

歌の意味
小さな里にある花橘の枝を引き寄せて折ろうとするけれど、まだ若すぎるので。
鑑賞
巻第十四 東歌 3574

詞書は前の歌に続き「譬喩歌」
 里に咲く花橘の枝を引き寄せて折ろうとするが、まだ若すぎてためらうと、幼い娘に手を出しかねる心をうたう譬喩歌である。若い娘への思いと、相手の幼さを気づかうためらいとが表されている。
 譬喩歌の一首である。前の第三千五百七十二首の「ふふまる時」と同じく、まだ若い娘を植物にたとえる。
 作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。

 初句「小里なる」は小さな里にあるの意で、「小」は接頭語である。
 二句「花橘を」は花の咲いた橘で、若い娘をたとえる。
 三句「引き攀ぢて」の「引き攀ぢ」は枝を引き寄せることである。
 四句「折らむとすれど」は折ろうとするけれどの意で、娘を自分のものにしようとすることをいう。
 結句「うら若みこそ」の「うら若み」はまだ若いのでの意、「こそ」は強意で、下に「ためらう」などが省略された余情のある結びである。

はなたちばな:花の咲いた橘
ひきよづ:枝などを引き寄せる
うらわかし:若々しい、まだ若い
出典
万葉集
前の歌
あしひきの山かづらかげましばにも 得がたきかげを置きや枯らさむ
次の歌
美夜自呂のすかへに立てるかほが花 な咲き出でそねこめて偲はむ