愛し妹をいづち行かめと山菅の
そがひに寝しく今し悔しも
- 歌の意味
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いとしい妻がどこへ行くものかと、山菅のように背を向けて寝たことが、今となっては悔やまれる。
- 鑑賞
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巻第十四 東歌 3577
詞書「挽歌」
いとしい妻がどこへも行くはずがないと思い込み、背を向け合って寝たことが、妻を亡くした今となっては悔やまれるとうたう挽歌である。ささいな仲違いが永遠の別れとなった後悔が、痛切に表されている。
本歌は巻十四で唯一の挽歌であり、巻末を飾る。左注に「以前の歌詞は、未だ国土山川の名を勘へ知ること得ず」とあり、第三千四百三十八首以降の歌の国名が知られないことを記す。巻頭の第三千三百四十八首が夜の船泊りという旅の一場面で始まるのに対し、巻末は亡き妻を悼む挽歌で閉じられている。
作者は未詳である。東歌は東国の人々の間でうたわれた歌とされ、方言をまじえた素朴でおおらかな表現が特色である。
初句「愛し妹を」の「愛し」は「愛しき」の東国方言で、いとしい妻をいう。
二句「いづち行かめと」の「いづち」はどこへ、「め」は推量で、どこへ行くものかと高をくくったことをいう。
三句「山菅の」は山に生える菅で、葉が背き合って生えることから「そがひ」にかかる枕詞である。
四句「そがひに寝しく」の「そがひ」は背中合わせ、「寝しく」は寝たことの意で、常陸国歌の第三千三百九十一首の「そがひに見ゆる」と同じ語である。
結句「今し悔しも」の「し」は強意で、今となっては悔やまれると結ぶ。巻末の一首として、取り返しのつかない後悔で巻十四を閉じる。
やますげ:山に生える菅。「そがひ」などにかかる枕詞
そがひ:背中合わせ、背後
- 出典
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万葉集
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苗代の小水葱が花を衣に摺り なるるまにまにあぜか愛しけ
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武庫の浦の入江の洲鳥羽ぐくもる 君を離れて恋に死ぬべし