武庫の浦の入江の洲鳥羽ぐくもる
君を離れて恋に死ぬべし
- 歌の意味
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武庫の浦の入江の洲にいる鳥が羽で雛を包むように、私を大切に包みこんでくれたあなたから離れて、私は恋しさのあまり死んでしまうだろう。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3578
詞書「新羅に遣はさるる使人等、別れを悲しびて贈答し、また海路にして情を慟みて思ひを陳べ、并せて所に当りて誦する古歌」
遣新羅使に任じられた夫との別れに際して、残される妻が詠んだ歌である。親鳥が雛を羽で包むように自分を慈しんでくれた夫と離れれば、恋しさで死んでしまうだろうと訴えている。巻第十五の巻頭に置かれ、ここから百四十五首に及ぶ遣新羅使人の歌群が始まる。
本巻の前半は、天平八年に新羅へ遣わされた使節一行の歌を、難波の出航から帰途まで旅程の順に収めた歌群である。左注に「右十一首贈答」とあり、巻頭の十一首は出発を前にした使人とその妻との別れの贈答である。作者の名はいずれも記されていない。
初句「武庫の浦の」 武庫の浦は現在の兵庫県尼崎市から西宮市にかけての武庫川河口付近の海岸で、難波を出た船が最初に通る海辺である。初句から二句までが三句「羽ぐくもる」を導く序詞となっている。
二句「入江の洲鳥」 入江の洲にいる水鳥のことで、親鳥が雛を羽で覆う姿が次の句の比喩となる。
三句「羽ぐくもる」 羽で包みこんで大切に守る意で、夫が妻を慈しんできたことをたとえる。次歌の第三千五百七十九首で夫が「羽ぐくみ持ちて」と同じ語で応じており、贈答の対応が明らかである。
四句「君を離れて」 「君」は夫を指す。「離れて」は別れて遠ざかる意である。
結句「恋に死ぬべし」 「べし」は推量の助動詞で、恋しさのあまり死んでしまうだろうという強い嘆きを表す。
はぐくもる:羽で包みこんで大切に守る
すどり:洲にいる鳥、水辺の鳥
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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愛し妹をいづち行かめと山菅の そがひに寝しく今し悔しも
- 次の歌
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大船に妹乗るものにあらませば 羽ぐくみ持ちて行かましものを