大船に妹乗るものにあらませば
羽ぐくみ持ちて行かましものを
- 歌の意味
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大きな船に妻が乗ってよいものであったなら、羽で包むように大事に抱えて連れて行くのに。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3579
詞書は前の歌に続き「新羅に遣はさるる使人等、別れを悲しびて贈答し、また海路にして情を慟みて思ひを陳べ、并せて所に当りて誦する古歌」
前歌の妻の歌に夫が答えた歌である。妻を船に乗せることができるなら、羽で包むようにして連れて行くのにと、かなわぬ願いを述べて妻をいたわっている。妻のことば「羽ぐくもる」をそのまま受けて返したところに、贈答歌らしい心の通い合いがある。
本巻の前半は、天平八年に新羅へ遣わされた使節一行の歌を、難波の出航から帰途まで旅程の順に収めた歌群である。左注に「右十一首贈答」とあり、巻頭の十一首は出発を前にした使人とその妻との別れの贈答である。作者の名はいずれも記されていない。
初句「大船に」 遣新羅使の一行が乗る大型の官船を指す。
二句「妹乗るものに」 「妹」は妻のこと。使節の船に妻を同乗させることは許されなかった。
三句「あらませば」 「ませ」は反実仮想の助動詞「まし」の未然形で、結句の「行かまし」と呼応し、もし乗ってよいものであったならの意となる。
四句「羽ぐくみ持ちて」 前歌第三千五百七十八首の「羽ぐくもる」を受けた語で、親鳥が雛を抱くように大事に抱えての意である。
結句「行かましものを」 「まし」は反実仮想、「ものを」は逆接を含む詠嘆で、連れて行けない現実への無念を残して結んでいる。
はぐくむ:羽で包むようにして大切に守り育てる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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武庫の浦の入江の洲鳥羽ぐくもる 君を離れて恋に死ぬべし
- 次の歌
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君が行く海辺の宿に霧立たば 我が立ち嘆く息と知りませ