ま幸くて妹が斎はば沖つ波
千重に立つとも障りあらめやも
- 歌の意味
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おまえが無事でいて、身を慎んで祈ってくれるなら、沖の波が幾重に立とうとも、差し障りなどあるだろうか。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3583
詞書は前の歌に続き「新羅に遣はさるる使人等、別れを悲しびて贈答し、また海路にして情を慟みて思ひを陳べ、并せて所に当りて誦する古歌」
前歌の妻の願いに答え、おまえが無事で祈ってくれれば荒波も恐れることはないと夫が励ました歌である。旅に出た人の安全は、家に残る者が身を慎んで神に祈る「斎ひ」によって守られると信じられていた。妻の祈りを頼みとすることで、妻の不安を和らげようとしている。
本巻の前半は、天平八年に新羅へ遣わされた使節一行の歌を、難波の出航から帰途まで旅程の順に収めた歌群である。左注に「右十一首贈答」とあり、巻頭の十一首は出発を前にした使人とその妻との別れの贈答である。作者の名はいずれも記されていない。
初句「ま幸くて」 「ま」は接頭語で、無事であっての意。妻の無事を前提としている。
二句「妹が斎はば」 「斎ふ」は身を清め慎んで神を祭り、無事を祈ることである。
三句「沖つ波」 「つ」は連体を表す古い格助詞で、沖の波の意である。
四句「千重に立つとも」 「千重」は幾重にも重なること。「とも」は逆接の仮定条件で、たとえ立とうともの意。
結句「障りあらめやも」 「やも」は反語で、差し障りなどあろうか、いやないと強く打ち消す。前歌第三千五百八十二首の「障むことなく」を受けたことばである。
いはふ:身を清め慎んで神を祭り、無事を祈る
さはり:差し障り、妨げ
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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大船を荒海に出だしいます君 障むことなく早帰りませ
- 次の歌
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別れなばうら悲しけむ我が衣 下にを着ませ直に逢ふまでに