別れなばうら悲しけむ我が衣
下にを着ませ直に逢ふまでに
- 歌の意味
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別れてしまえば心悲しいことでしょう。私の衣を肌着として身につけていてください、じかにお逢いできるその日まで。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3584
詞書は前の歌に続き「新羅に遣はさるる使人等、別れを悲しびて贈答し、また海路にして情を慟みて思ひを陳べ、并せて所に当りて誦する古歌」
別れの悲しみを思いやり、自分の衣を肌に着けていてほしいと妻が夫に託した歌である。身につけた衣には着る人の魂がこもると考えられ、衣を交わして肌身に着けることは、離れても心を結びつけておく習いであった。結句「直に逢ふまでに」は、本巻後半の狭野弟上娘子の第三千七百五十一首と第三千七百七十八首にも用いられ、下衣を託す趣向も第三千七百五十一首と重なっている。
本巻の前半は、天平八年に新羅へ遣わされた使節一行の歌を、難波の出航から帰途まで旅程の順に収めた歌群である。左注に「右十一首贈答」とあり、巻頭の十一首は出発を前にした使人とその妻との別れの贈答である。作者の名はいずれも記されていない。
初句「別れなば」 「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形で、別れてしまったならばの意である。
二句「うら悲しけむ」 「うら」は心の意で、心の底から悲しいことだろうの意。「けむ」は推量で、ここで切れる二句切れの歌である。
三句「我が衣」 妻が自分の着ていた衣を夫に贈ったものである。
四句「下にを着ませ」 「下」は上着の下、肌に近い所。「を」は強意の間投助詞、「ませ」は尊敬の命令形で、肌着として着てくださいの意。
結句「直に逢ふまでに」 「直に」はじかに、人を介さずにの意で、再会の日までという期限を示す。次歌第三千五百八十五首で夫が「下にも着よと贈りたる」と受けている。
うら:心、内心
した:上着の下、肌に近い所
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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ま幸くて妹が斎はば沖つ波 千重に立つとも障りあらめやも
- 次の歌
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我妹子が下にも着よと贈りたる 衣の紐を我れ解かめやも