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我がゆゑに思ひな痩せそ秋風の
吹かむその月逢はむものゆゑ

歌の意味
私のために思い悩んで痩せたりしないでくれ。秋風の吹くその月には逢えるのだから。
鑑賞
巻第十五 遣新羅使人歌 3586

詞書は前の歌に続き「新羅に遣はさるる使人等、別れを悲しびて贈答し、また海路にして情を慟みて思ひを陳べ、并せて所に当りて誦する古歌」
 自分のことを思って痩せたりするなと、夫が妻を気遣った歌である。秋風の吹く月には帰って逢えるのだからと、帰国の予定を示して慰めている。本巻の第三千五百八十一首と同じく秋の再会を約しているが、一行の帰京は翌年にずれこんだ。また初句「我がゆゑに」は、旅の途中で妻の嘆きを思う第三千六百十五首の初句にも現れ、出発の歌と道中の歌とが呼応している。
 本巻の前半は、天平八年に新羅へ遣わされた使節一行の歌を、難波の出航から帰途まで旅程の順に収めた歌群である。左注に「右十一首贈答」とあり、巻頭の十一首は出発を前にした使人とその妻との別れの贈答である。作者の名はいずれも記されていない。

 初句「我がゆゑに」 「ゆゑ」はため、原因の意で、私のためにの意である。結句の「ものゆゑ」と「ゆゑ」の語が首尾で響き合う。
 二句「思ひな痩せそ」 「な〜そ」は禁止を表し、思い悩んで痩せないでくれの意。ここで切れる二句切れの歌である。
 三句「秋風の」 秋の到来を示す景物で、帰国予定の時期を表す。
 四句「吹かむその月」 「む」は推量の助動詞の連体形で、秋風が吹くであろうその月の意である。
 結句「逢はむものゆゑ」 「ものゆゑ」はここでは順接で、逢えるのだからの意となり、二句の禁止の理由を示している。

ゆゑ:ため、原因、理由
出典
万葉集
前の歌
我妹子が下にも着よと贈りたる 衣の紐を我れ解かめやも
次の歌
栲衾新羅へいます君が目を 今日か明日かと斎ひて待たむ