朝開き漕ぎ出て来れば武庫の浦の
潮干の潟に鶴が声すも
- 歌の意味
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夜明けに船出して漕ぎ出して来ると、武庫の浦の潮の引いた干潟で、鶴の鳴く声がする。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3595
詞書は前の歌に続き「新羅に遣はさるる使人等、別れを悲しびて贈答し、また海路にして情を慟みて思ひを陳べ、并せて所に当りて誦する古歌」
夜明けに港を出て武庫の浦にさしかかると、干潟で鶴が鳴いていたという叙景の歌である。いよいよ海路に入った旅の始まりを、朝の干潟に響く鶴の声でとらえている。武庫の浦は巻頭の第三千五百七十八首で妻が詠みこんだ地でもあり、別れの歌の地名を船上から実際に通っていくという配列になっている。
左注に「右八首乗船入海路上作歌」とあり、本巻の第三千五百九十四首から第三千六百一首までの八首は、船に乗って海路に入ってからの作である。作者の名は記されていない。
初句「朝開き」 朝、港を船出することをいう語で、旅立ちの爽やかさを帯びている。
二句「漕ぎ出て来れば」 「来れば」は已然形に「ば」がついた確定条件で、漕ぎ出して来るとの意である。
三句「武庫の浦の」 巻頭の第三千五百七十八首で詠まれた武庫の浦を、船上から実際に通っていく。
四句「潮干の潟に」 潮が引いて現れた干潟のことで、鶴が餌をあさる場所である。
結句「鶴が声すも」 「鶴」は「たづ」と読み、歌語として用いられる。「も」は詠嘆の終助詞で、鶴の声が聞こえることだと感じ入っている。
あさびらき:朝、港を船出すること
たづ:鶴の歌語
かた:潟、潮が引いて現れる干潟
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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潮待つとありける船を知らずして 悔しく妹を別れ来にけり
- 次の歌
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我妹子が形見に見むを印南都麻 白波高み外にかも見む