離れ磯に立てるむろの木うたがたも
久しき時を過ぎにけるかも
- 歌の意味
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離れ磯に立っているむろの木は、きっと長い年月を過ごしてきたのであろう。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3600
詞書は前の歌に続き「新羅に遣はさるる使人等、別れを悲しびて贈答し、また海路にして情を慟みて思ひを陳べ、并せて所に当りて誦する古歌」
海中の離れ磯にただ一本立つむろの木を見て、長い年月をそこで過ごしてきたのだろうと感じ入った歌である。孤立した木の姿に悠久の時の流れを見ており、旅の途上の感慨がこもる。むろの木は鞆の浦の名木として知られ、巻第三の第四百四十六首以下で大伴旅人が亡き妻をしのんで詠んだ鞆の浦のむろの木の歌が想起される。次歌第三千六百一首もこの木を詠み、二首で一組となっている。
左注に「右八首乗船入海路上作歌」とあり、本巻の第三千五百九十四首から第三千六百一首までの八首は、船に乗って海路に入ってからの作である。作者の名は記されていない。
初句「離れ磯に」 岸から離れて海中に突き出た岩のことで、孤立したさまを示す。
二句「立てるむろの木」 「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、立っているむろの木の意。むろの木はネズの木とされる常緑樹である。
三句「うたがたも」 きっと、確かにの意の副詞で、結句の推量と呼応する。
四句「久しき時を」 長い年月をの意で、木の過ごしてきた歳月の長さを表す。
結句「過ぎにけるかも」 「に」は完了、「けるかも」は詠嘆で、過ごしてきたのだなあと感じ入って結ぶ。
はなれそ:岸から離れて海中にある岩
むろのき:ネズの木とされる常緑樹
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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月読の光りを清み神島の 磯廻の浦ゆ船出す我れは
- 次の歌
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しましくもひとりありうるものにあれや 島のむろの木離れてあるらむ