しましくもひとりありうるものにあれや
島のむろの木離れてあるらむ
- 歌の意味
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ほんのしばらくでも独りでいられるものだろうか、そうではないはずなのに、どうして島のむろの木は離れて独り立っているのだろう。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3601
詞書は前の歌に続き「新羅に遣はさるる使人等、別れを悲しびて贈答し、また海路にして情を慟みて思ひを陳べ、并せて所に当りて誦する古歌」
前歌に続いて離れ磯のむろの木を詠み、しばらくでも独りでいられるものかと問いかけた歌である。仲間から離れて立つ木の姿に、妻と別れて独り旅を続ける自身の孤独を重ねている。前歌が木の過ごした歳月の長さを見たのに対し、本歌は木の孤独に目を向けており、二首で長い時と独りの身という二つの面を詠み分けている。乗船後の八首はこの歌で締めくくられる。
左注に「右八首乗船入海路上作歌」とあり、本巻の第三千五百九十四首から第三千六百一首までの八首は、船に乗って海路に入ってからの作である。作者の名は記されていない。
初句「しましくも」 しばらくの間もの意で、ほんの短い時間を表す。
二句「ひとりありうる」 「ありう」はそのままでいることができる意で、独りでいられるの意である。
三句「ものにあれや」 「や」は反語で、独りでいられるものであろうか、そうではないの意。六音の字余りで、ここで切れる三句切れとなっている。
四句「島のむろの木」 前歌第三千六百首の離れ磯に立つむろの木を指す。
結句「離れてあるらむ」 「らむ」は現在の事柄の原因を推量する助動詞で、どうして離れて立っているのだろうと問いかけている。
ありう:そのままでいることができる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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離れ磯に立てるむろの木うたがたも 久しき時を過ぎにけるかも
- 次の歌
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あをによし奈良の都にたなびける 天の白雲見れど飽かぬかも