- 歌の意味
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大船に左右の櫂をびっしりと取り付けて、海原を漕ぎ出して渡っていく、月の若者よ。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3611
詞書「七夕の歌一首」
夜空を渡っていく月を、大船を漕いで海原を渡る若者に見立てた七夕の歌である。左注に「右柿本朝臣人麻呂歌」とあり、人麻呂の作とされる。天を海に、月を船を漕ぐ男に見立てる壮大な発想で、七夕の夜の天空をとらえている。航海を続ける一行がこの歌を誦したことで、自分たちの船旅と天上の渡りとが重ねられている。「大船に真楫しじ貫き」の句は、本巻の第三千六百二十七首の長歌や第三千六百七十九首にも現れる。
作者の柿本人麻呂は、持統天皇と文武天皇の時代に宮廷歌人として活躍した万葉集を代表する歌人で、旅の歌や挽歌にすぐれた作を多く残した。本歌は一行が旅の途上で誦した人麻呂の歌である。
初句「大船に」 大きな船にの意で、月を乗せて天を渡る船を思い描いている。
二句「真楫しじ貫き」 「真楫」は船の左右両舷にそろえた櫂、「しじ貫く」はたくさん取り付ける意である。本巻の第三千六百七十九首にも同じ句がある。
三句「海原を」 天空を海原に見立てている。
四句「漕ぎ出て渡る」 漕ぎ出して渡っていくの意で、月が夜空をゆっくりと移っていくさまである。
結句「月人壮士」 月を若い男に見立てた語で、体言止めにより、天を渡る月の姿を印象づけて結んでいる。
まかぢ:船の左右両舷にそろえた櫂
しじぬく:たくさん取り付ける
つきひとをとこ:月を若い男に見立てた語
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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安胡の浦に舟乗りすらむ娘子らが 赤裳の裾に潮満つらむか
- 次の歌
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海原を八十島隠り来ぬれども 奈良の都は忘れかねつも