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海原を八十島隠り来ぬれども
奈良の都は忘れかねつも

歌の意味
海原を、数多くの島々の陰に隠れるようにして遠くやって来たけれども、奈良の都はどうしても忘れられない。
鑑賞
巻第十五 遣新羅使人歌 3613

詞書は前の歌に続き「備後国水調郡の長井の浦に船泊まりする夜に作る歌三首」
 数多くの島陰をたどって遠くまで来たが、奈良の都は忘れられないと望郷の思いを詠んだ歌である。島々に隔てられて都がますます遠のいていく実感が、上の句の「八十島隠り」に表されている。下の句「奈良の都は忘れかねつも」は、安芸の長門の島で詠まれた本巻の第三千六百十八首の下の句と同じであり、旅の進む先々で同じ望郷の嘆きが繰り返されている。
 詞書によれば、備後国水調郡の長井の浦に船を泊めた夜の作三首の一つである。長井の浦は現在の広島県三原市の糸崎付近とされる。三首の最初は大判官壬生宇太麻呂の旋頭歌で、本歌の作者の名は記されていない。

 初句「海原を」 広々とした海の上をの意で、「を」は経過する場所を表す。
 二句「八十島隠り」 「八十島」は数多くの島、「隠り」は隠れることで、島々の陰を縫って来たさまを表す。
 三句「来ぬれども」 「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形で、逆接の「ども」により、遠く来たけれどもと下へ転じる。
 四句「奈良の都は」 一行が後にしてきた平城京である。
 結句「忘れかねつも」 「かぬ」はできない意、「つ」は完了、「も」は詠嘆で、忘れることができないことだと結ぶ。本巻の第三千六百十八首も同じ四句と結句で結ばれる。

やそしま:数多くの島
しまがくる:島陰に隠れる
わすれかぬ:忘れることができない
出典
万葉集
前の歌
大船に真楫しじ貫き海原を 漕ぎ出て渡る月人壮士
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帰るさに妹に見せむにわたつみの 沖つ白玉拾ひて行かな