我がゆゑに妹嘆くらし風早の
浦の沖辺に霧たなびけり
- 歌の意味
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私のことを思って妻が嘆いているらしい。風早の浦の沖のあたりに、霧がたなびいている。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3615
詞書「風速の浦に船泊まりする夜に作る歌二首」
風早の浦の沖にたなびく霧を見て、妻が自分のことを思って嘆いているらしいと推し量った歌である。出発の際に妻が詠んだ本巻の第三千五百八十首「霧立たば我が立ち嘆く息と知りませ」を受け、その約束どおりに霧を妻の嘆きの息と見ている。別れの贈答で交わされたことばが、旅先で現実の景色となって作者の前に現れるという、歌群の構成の妙がうかがえる。初句「我がゆゑに」は、出発前に夫が妻を気遣った第三千五百八十六首の初句とも同じである。
詞書によれば、風速の浦に船を泊めた夜の作二首の一つである。風速の浦は現在の広島県東広島市安芸津町の風早付近とされる。作者の名は記されていない。
初句「我がゆゑに」 私のためにの意で、妻の嘆きの原因が自分にあることを示す。
二句「妹嘆くらし」 「らし」は根拠のある推定の助動詞で、妻が嘆いているらしいの意。ここで切れる二句切れの歌である。
三句「風早の」 安芸国の風早の浦で、現在の東広島市安芸津町付近とされる。
四句「浦の沖辺に」 「沖辺」は沖のあたりの意である。
結句「霧たなびけり」 「り」は存続の助動詞で、霧がたなびいているの意。この霧が二句の推定の根拠となっており、本巻の第三千五百八十首で妻が詠んだ嘆きの息としての霧と呼応している。
おきへ:沖のあたり
たなびく:雲や霞が横に長く引く
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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帰るさに妹に見せむにわたつみの 沖つ白玉拾ひて行かな
- 次の歌
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沖つ風いたく吹きせば我妹子が 嘆きの霧に飽かましものを