石走る滝もとどろに鳴く蝉の
声をし聞けば都し思ほゆ
- 歌の意味
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岩の上をほとばしる滝の音もかき消すほどに、とどろくように鳴く蝉の声を聞くと、都のことが思い出される。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3617
詞書「安芸国の長門の島にして磯辺に船泊まりして作る歌五首」
滝のとどろきにも負けないほどに鳴く蝉の声を聞いて、都を思い出すと詠んだ歌である。真夏の島の激しい蝉しぐれが、都で聞いた蝉の声を呼び起こし、望郷の思いをかき立てている。強い音の描写から一転して静かな望郷へと移る構成に、旅の心のありようがよく表れている。
作者の大石蓑麻呂は遣新羅使の一行に加わった人物であるが、官職などの伝は詳らかでない。
詞書によれば、安芸国の長門の島の磯辺に船を泊めて作った五首の一つである。長門の島は現在の広島県呉市の倉橋島とされる。左注に「右一首大石蓑麻呂」とある。
初句「石走る」 岩の上を激しくほとばしる意で、「滝」にかかる枕詞としても用いられる。
二句「滝もとどろに」 「とどろに」は音が響きわたるさまで、滝の音もとどろくほどにの意。蝉の声の激しさを表す比較となっている。
三句「鳴く蝉の」 島の山あいで鳴きしきる夏の蝉である。
四句「声をし聞けば」 「し」は強意の副助詞で、その声を聞くとの意。已然形に「ば」がついた確定条件である。
結句「都し思ほゆ」 「し」は強意、「思ほゆ」は自然に思われる意で、都が思い出されると結ぶ。
いはばしる:岩の上を激しく流れる、「滝」にかかる枕詞
おもほゆ:自然に思われる、思い出される
- 作者
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大石蓑麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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沖つ風いたく吹きせば我妹子が 嘆きの霧に飽かましものを
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山川の清き川瀬に遊べども 奈良の都は忘れかねつも