我れのみや夜船は漕ぐと思へれば
沖辺の方に楫の音すなり
- 歌の意味
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自分だけが夜の船を漕いでいるのかと思っていたら、沖のほうで櫂の音がしている。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3624
詞書は前の歌に続き「長門の浦より船出する夜に、月の光を仰ぎ観て作る歌三首」
夜の海を漕いでいるのは自分たちだけかと思っていたところ、沖のほうからも櫂の音が聞こえてきたという歌である。暗い海の上で他の船の存在を音で知り、孤独な夜の船旅の中にふと仲間を見いだした安堵と驚きが表されている。長門の浦からの夜の船出を詠んだ三首の最後で、月光、漁り火、櫂の音と、夜の海の光と音とが順にとらえられている。
詞書によれば、長門の浦から船出した夜に、月の光を仰ぎ見て作った三首の一つである。長門の浦は倉橋島の港とされる。作者の名は記されていない。
初句「我れのみや」 「や」は疑問の係助詞で、自分だけがの意。二句の「漕ぐ」まで疑問がかかる。
二句「夜船は漕ぐと」 「夜船」は夜に漕ぐ船のことで、夜に漕いでいるのは自分だけかと思う心である。
三句「思へれば」 「れ」は存続の助動詞「り」の已然形で、思っていたところの意となる。
四句「沖辺の方に」 沖のあたりの方角にの意で、暗くて姿の見えない遠くの船を示す。
結句「楫の音すなり」 「楫」は船を漕ぐ櫂のこと、「なり」は音による推定を表す助動詞で、櫂の音がしているようだと結ぶ。
よふね:夜に漕ぐ船
かぢ:船を漕ぐ櫂
おきへ:沖のあたり
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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山の端に月傾けば漁りする 海人の燈火沖になづさふ
- 次の歌
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鶴が鳴き葦辺をさして飛び渡る あなたづたづしひとりさ寝れば