鶴が鳴き葦辺をさして飛び渡る
あなたづたづしひとりさ寝れば
- 歌の意味
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鶴が鳴きながら葦辺をめざして飛んでいく。ああ、なんと心細いことか、独りで寝ていると。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3626
詞書は前の歌に続き「古挽歌一首并せて短歌」
鶴が鳴きながら葦辺へ飛んでいくのを見て、独り寝の心細さを嘆いた歌である。前に置かれた本巻の第三千六百二十五首の長歌は、鴨でさえ夫婦寄り添って寝るのに、亡き妻の着せてくれた衣を片敷いて独り寝ることを嘆く挽歌で、本歌はその反歌にあたる。左注に「右丹比大夫悽愴亡妻歌」とあり、もとは丹比大夫が亡き妻を悼んだ古い挽歌である。一行はこれを旅の途上で誦し、妻と離れて独り寝る自分たちの身の上を重ねたものと考えられる。
作者の「丹比大夫」は丹比氏の大夫の意で、誰を指すかについて定説を見ない。「大夫」は五位以上の官人に対する呼称である。
鶴の「たづ」から「たづたづし」を導く音の重なりは巧みで、鳥が連れ立って飛ぶ姿と独りの身との対比が鮮やかである。
初句「鶴が鳴き」 「鶴」は「たづ」と読む歌語で、鳴きながら飛ぶ鶴の姿である。
二句「葦辺をさして」 「葦辺」は葦の生えている水辺で、鶴がねぐらへ向かうさまである。
三句「飛び渡る」 空を飛んでいくの意で、ここで切れる三句切れの歌である。鶴が連れ立って帰っていく姿が、独りの身と対比される。
四句「あなたづたづし」 「あな」は感動詞、「たづたづし」は心細く頼りない意で、初句の「たづ」の音を受けて導かれている。
結句「ひとりさ寝れば」 「さ」は接頭語、「寝れば」は已然形に「ば」がついた確定条件で、独りで寝ているのでの意。四句と倒置になっている。
たづ:鶴の歌語
あしへ:葦の生えている水辺
さぬ:寝る、「さ」は接頭語
- 作者
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丹比大夫
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我れのみや夜船は漕ぐと思へれば 沖辺の方に楫の音すなり
- 次の歌
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玉の浦の沖つ白玉拾へれど またぞ置きつる見る人をなみ