秋さらば我が船泊てむ忘れ貝
寄せ来て置けれ沖つ白波
- 歌の意味
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秋になったら、帰りに私の船はここに泊まるだろう。それまでに忘れ貝を寄せて置いておいてくれ、沖の白波よ。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3629
詞書は前の歌に続き「物に属けて思ひを発す歌一首并せて短歌」
秋の帰途にはここに船を泊めるだろうから、それまでに忘れ貝を浜に寄せておいてくれと、沖の白波に呼びかけた歌である。忘れ貝は拾えば恋の苦しさを忘れさせるとされた貝で、妻への恋しさに苦しむ心を癒やしたいという願いが込められている。忘れ貝を求める趣向は、対馬の竹敷の浦で詠まれた本巻の第三千七百十一首の「恋忘れ貝」にも見える。初句「秋さらば」は出発の際の第三千五百八十一首と同じく、秋の帰国の予定を踏まえている。
詞書によれば、物に寄せて思いを述べた長歌、本巻の第三千六百二十七首に添えられた反歌二首の一つである。長歌は難波の御津を出てから玉の浦に至るまでの船旅をたどり、玉の浦で拾った玉を妻に贈ろうにも使いがないので置いてきたと結ばれる。作者の名は記されていない。
初句「秋さらば」 秋になったならばの意で、秋に帰国する予定を踏まえている。
二句「我が船泊てむ」 「泊つ」は船が港に着いて停泊する意、「む」は推量で、帰途に船がここに泊まるだろうの意。ここで切れる二句切れである。
三句「忘れ貝」 二枚貝の片方の殻などをいい、拾うと恋の苦しさを忘れるとされた。
四句「寄せ来て置けれ」 白波に、忘れ貝を浜に寄せて置いておけと命じている。
結句「沖つ白波」 沖の白波への呼びかけで、四句と倒置になっている。体言止めで結ぶ。
はつ:船が港に着いて停泊する
わすれがひ:二枚貝の片方の殻など、拾うと恋の苦しさを忘れるとされた
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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玉の浦の沖つ白玉拾へれど またぞ置きつる見る人をなみ
- 次の歌
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真楫貫き船し行かずは見れど飽かぬ 麻里布の浦に宿りせましを