真楫貫き船し行かずは見れど飽かぬ
麻里布の浦に宿りせましを
- 歌の意味
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櫂をそろえて船が先へ進んでいくのでなかったら、見ても見飽きない麻里布の浦に宿をとるのに。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3630
詞書「周防国玖河郡の麻里布の浦を行く時に作る歌八首」
船が先を急ぐのでなければ、見飽きることのない麻里布の浦に泊まっていきたいのにと、土地の美しさをたたえた歌である。旅程に従って行き過ぎるほかない官人の身の上と、美しい浦への心残りとが表されている。「見れど飽かぬ麻里布の浦」は、同じ一連の本巻の第三千六百三十五首にも繰り返され、八首の中で麻里布の浦への賛美が響き合っている。
詞書によれば、周防国玖河郡の麻里布の浦を行く時に作った八首の一つである。麻里布の浦は現在の山口県岩国市の海岸とされる。作者の名は記されていない。
初句「真楫貫き」 「真楫」は船の左右両舷にそろえた櫂で、「貫く」はそれを取り付ける意である。
二句「船し行かずは」 「し」は強意、「ずは」は打消の仮定で、船が先へ行くのでなかったらの意。結句の「まし」と呼応する。
三句「見れど飽かぬ」 見ても見飽きないの意で、土地をたたえる常套句である。六音の字余りとなっている。
四句「麻里布の浦に」 周防国の麻里布の浦で、現在の岩国市の海岸とされる。
結句「宿りせましを」 「まし」は反実仮想、「を」は逆接を含む詠嘆で、宿をとるのにと心残りを述べて結ぶ。
まかぢ:船の左右両舷にそろえた櫂
やどり:宿をとること、旅寝
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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秋さらば我が船泊てむ忘れ貝 寄せ来て置けれ沖つ白波
- 次の歌
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いつしかも見むと思ひし粟島を 外にや恋ひむ行くよしをなみ