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筑紫道の可太の大島しましくも
見ねば恋しき妹を置きて来ぬ

歌の意味
筑紫へ向かう道にある可太の大島ではないが、しばらくの間でも見ないと恋しくなる妻を、家に置いて来てしまった。
鑑賞
巻第十五 遣新羅使人歌 3634

詞書は前の歌に続き「周防国玖河郡の麻里布の浦を行く時に作る歌八首」
 筑紫への航路にある可太の大島を詠みこみ、しばらくでも見ないと恋しい妻を置いて来てしまったと嘆いた歌である。「大島」の「しま」の音から「しましく」を導く技巧によって、目の前の島の景色が妻への恋しさへと結びつけられている。可太の大島は、現在の山口県の周防大島とされる。
 詞書によれば、周防国玖河郡の麻里布の浦を行く時に作った八首の一つである。麻里布の浦は現在の山口県岩国市の海岸とされる。作者の名は記されていない。

 初句「筑紫道の」 「筑紫道」は筑紫へ向かう道のことで、ここでは筑紫への航路を指す。
 二句「可太の大島」 周防大島とされる島で、「大島」の「しま」の音を受けて三句の「しましく」を導く序となっている。
 三句「しましくも」 しばらくの間もの意で、ほんの少しの間でもということである。
 四句「見ねば恋しき」 「見ねば」は打消の「ず」の已然形に「ば」がついた形で、見ないと恋しいの意となり、結句の「妹」を修飾する。
 結句「妹を置きて来ぬ」 「ぬ」は完了の助動詞で、妻を家に置いて来てしまったと嘆いている。八音の字余りである。

つくしぢ:筑紫へ向かう道
出典
万葉集
前の歌
粟島の逢はじと思ふ妹にあれや 安寐も寝ずて我が恋ひわたる
次の歌
妹が家路近くありせば見れど飽かぬ 麻里布の浦を見せましものを