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波の上に浮き寝せし宵あど思へか
心悲しく夢に見えつる

歌の意味
波の上に浮かんで寝た夜、妻はどう思っていたからか、切ないほど悲しげに夢に現れたことだ。
鑑賞
巻第十五 遣新羅使人歌 3639

詞書は前の歌に続き「大島の鳴門を過ぎて再宿を経ぬる後に、追ひて作る歌二首」
 鳴門の難所を越えた夜、波の上で寝ていると妻が悲しげに夢に現れたことを、妻はどう思っていたのだろうと思い返した歌である。当時は、相手が自分を思うとその人の夢に現れると信じられており、妻の悲しげな姿に、自分の身を案じる妻の心を感じ取っている。難所を通る不安の中で見た夢が、二晩を経たあとの追想として詠まれている。左注がなく、作者の名は記されていない。
 詞書によれば、大島の鳴門を通り過ぎて二晩を経た後に、思い返して作った二首の一つである。大島の鳴門は、周防大島と本土との間の大畠瀬戸を指すとされ、潮の流れの速い難所である。

 初句「波の上に」 揺れる船の上で波に浮かんでいるさまを示す。
 二句「浮き寝せし宵」 「浮き寝」は船の上で波に浮かんで寝ること、「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、浮き寝をした夜の意である。
 三句「あど思へか」 「あど」はなんと、どうしての意の語で、どう思っているからかの意。「か」は疑問の係助詞で、結びは連体形「つる」となる。
 四句「心悲しく」 心の底から悲しく、切なくの意で、夢に現れた妻の様子を表す。
 結句「夢に見えつる」 「夢」は「いめ」と読む。「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形で、三句の「か」を受けて結んでいる。

うきね:船の上で波に浮かんで寝ること
いめ:夢
出典
万葉集
前の歌
これやこの名に負ふ鳴門のうづ潮に 玉藻刈るとふ海人娘子ども
次の歌
都辺に行かむ船もが刈り薦の 乱れて思ふ言告げやらむ