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可之布江に鶴鳴き渡る志賀の浦に
沖つ白波立ちし来らしも

歌の意味
可之布江へ鶴が鳴きながら飛んでいく。志賀の浦に、沖の白波が立って寄せて来るらしい。
鑑賞
巻第十五 遣新羅使人歌 3654

詞書は前の歌に続き「筑紫の館に至りて、遥かに本郷を望みて、悽愴して作る歌四首」
 鶴が鳴きながら可之布江へ飛んでいくのを見て、志賀の浦に沖の白波が立ち寄せて来るらしいと推し量った叙景の歌である。鳥の動きから海の変化を知るという趣向は、本巻の第三千五百九十七首の「沖つ白波立ち来らし」と同じで、船旅の中で育まれた自然への観察の目がうかがえる。左注に、結句を「満ちし来ぬらし」とする異伝が記されている。可之布江は香椎の入江、現在の福岡市東区香椎付近とされる。
 詞書によれば、筑紫の館に着いて、遥かに故郷の方を望み、悲しみに沈んで作った四首の一つである。筑紫の館は博多湾に臨む外交使節のための施設で、のちの鴻臚館にあたるとされる。作者の名は記されていない。

 初句「可之布江に」 香椎の入江とされ、現在の福岡市東区香椎付近である。
 二句「鶴鳴き渡る」 鶴が鳴きながら飛んでいくことで、ここで切れる二句切れである。この鶴の動きが結句の推定の根拠となる。
 三句「志賀の浦に」 博多湾の志賀島の浦で、六音の字余りである。
 四句「沖つ白波」 沖の白波で、本巻の第三千五百九十七首にも同じ語が見える。
 結句「立ちし来らしも」 「し」は強意、「らし」は根拠のある推定、「も」は詠嘆である。左注の異伝では「満ちし来ぬらし」とあり、潮が満ちて来たらしいの意となる。

かしふえ:香椎の入江とされる
たづ:鶴の歌語
出典
万葉集
前の歌
志賀の浦に漁りする海人家人の 待ち恋ふらむに明かし釣る魚
次の歌
今よりは秋づきぬらしあしひきの 山松蔭にひぐらし鳴きぬ