今よりは秋づきぬらしあしひきの
山松蔭にひぐらし鳴きぬ
- 歌の意味
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今からはもう秋めいてきたらしい。山の松の木陰で、ひぐらしが鳴いた。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3655
詞書は前の歌に続き「筑紫の館に至りて、遥かに本郷を望みて、悽愴して作る歌四首」
山の松陰でひぐらしが鳴くのを聞き、季節が秋めいてきたことを感じ取った歌である。秋は出発の際に妻と再会を約した季節であり、本巻の第三千五百八十一首や第三千五百八十六首で約束した秋が、まだ新羅にも渡らない筑紫で訪れたことになる。季節の移ろいを詠む静かな歌であるが、果たせない約束への嘆きが背後に響いている。
詞書によれば、筑紫の館に着いて、遥かに故郷の方を望み、悲しみに沈んで作った四首の一つである。筑紫の館は博多湾に臨む外交使節のための施設で、のちの鴻臚館にあたるとされる。作者の名は記されていない。
初句「今よりは」 今からはの意で、季節の変わり目を感じ取ったことを示す。
二句「秋づきぬらし」 「秋づく」は秋らしくなる意、「らし」は根拠のある推定で、秋めいてきたらしいの意。ここで切れる二句切れである。
三句「あしひきの」 「山」にかかる枕詞である。
四句「山松蔭に」 山の松の木陰にの意である。
結句「ひぐらし鳴きぬ」 「ぬ」は完了で、ひぐらしが鳴いたの意。この声が二句の推定の根拠となる。ひぐらしは本巻の第三千五百八十九首や第三千六百二十首にも詠まれている。
あきづく:秋らしくなる
あしひきの:「山」にかかる枕詞
ひぐらし:夕暮れにカナカナと鳴く蝉
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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可之布江に鶴鳴き渡る志賀の浦に 沖つ白波立ちし来らしも
- 次の歌
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秋萩ににほへる我が裳濡れぬとも 君が御船の綱し取りてば