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風の共寄せ来る波に漁りする
海人娘子らが裳の裾濡れぬ

歌の意味
風とともに寄せて来る波に、漁をする海人の娘たちの、裳の裾が濡れてしまった。
鑑賞
巻第十五 遣新羅使人歌 3661

詞書は前の歌に続き「海辺にして月を望みて作る九首」
 風とともに寄せる波に、漁をする海人の娘たちの裳の裾が濡れたという叙景の歌である。月の照らす海辺で働く娘たちの姿を、濡れた裳の裾という細部によって生き生きととらえている。裳の裾が潮に濡れるという趣向は、古歌として誦された本巻の第三千六百十首の「赤裳の裾に潮満つらむか」にも見られる。左注に、四句と結句を「海人の娘子が裳の裾濡れぬ」とする異伝が記されている。
 詞書によれば、海辺で月を望み見て作った九首の一つである。筑紫の館に滞在していた折の作と考えられる。本歌の作者の名は記されていない。

 初句「風の共」 「共」は「むた」と読み、とともにの意で、風とともにの意である。
 二句「寄せ来る波に」 風に吹き寄せられて来る波にの意である。
 三句「漁りする」 漁をしているの意で、四句の娘たちを修飾する。
 四句「海人娘子らが」 海で漁をする家の娘たちで、「ら」は複数を表す。異伝では「海人の娘子が」となっている。
 結句「裳の裾濡れぬ」 「裳」は腰から下にまとう衣、「ぬ」は完了で、裳の裾が濡れてしまったと結ぶ。本巻の第三千六百十首の「赤裳の裾」と響き合う句である。

むた:…とともに
も:裳、腰から下にまとう衣
あまをとめ:海で漁をする家の娘
出典
万葉集
前の歌
神さぶる荒津の崎に寄する波 間なくや妹に恋ひわたりなむ
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わたつみの沖つ縄海苔来る時と 妹が待つらむ月は経につつ