わたつみの沖つ縄海苔来る時と
妹が待つらむ月は経につつ
- 歌の意味
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海の沖の縄海苔を手繰り寄せるように、夫が帰って来る時だと妻が待っているであろうその月は、むなしく過ぎていきながら。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3663
詞書は前の歌に続き「海辺にして月を望みて作る九首」
夫が帰る時だと妻が待っているであろう月が、むなしく過ぎていくと嘆いた歌である。沖の縄海苔を手繰る「繰る」から「来る」を導き、海辺の景物を待つ妻の心に結びつけている。結句「月は経につつ」は、肥前の狛島で詠まれた本巻の第三千六百八十五首の結句と同じであり、旅の進むにつれて帰国の約束の月が過ぎていく嘆きが繰り返されている。
詞書によれば、海辺で月を望み見て作った九首の一つである。筑紫の館に滞在していた折の作と考えられる。本歌の作者の名は記されていない。
初句「わたつみの」 「わたつみ」は海の神のことで、転じて海を指す。
二句「沖つ縄海苔」 「縄海苔」は縄のように長い海藻で、それを手繰る「繰る」の音から三句の「来る」を導く序となっている。
三句「来る時と」 夫が帰って来る時だとの意で、「繰る」と「来る」を掛けている。
四句「妹が待つらむ」 「らむ」は目の前にない現在の事柄の推量で、妻が待っているであろうの意。結句の「月」を修飾する。
結句「月は経につつ」 「経」は時が過ぎる意、「につつ」は完了の「ぬ」に継続の「つつ」がついた形で、月はどんどん過ぎていきながらと言いさして余韻を残す。
なはのり:縄のように長い海藻
ふ:経る、時が過ぎる
くる:手繰り寄せる意の「繰る」と、帰って来る意の「来る」を掛ける
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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風の共寄せ来る波に漁りする 海人娘子らが裳の裾濡れぬ
- 次の歌
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志賀の浦に漁りする海人明け来れば 浦廻漕ぐらし楫の音聞こゆ