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ひさかたの月は照りたり暇なく
海人の漁りは灯し合へり見ゆ

歌の意味
空の月は明るく照っている。その下に、すきまもなく、海人の漁り火が灯し合っているのが見える。
鑑賞
巻第十五 遣新羅使人歌 3672

詞書は前の歌に続き「筑前国志麻郡の韓亭に到りて、船泊まりして三日を経。時に夜月の光、皎々として流照す。たちまちにこの華に対して旅情悽噎す。おのもおのも心緒を陳べて、いささかに裁る歌六首」
 明るく照る月の下で、海人の漁り火がすきまなく灯し合っているのが見えると詠んだ叙景の歌である。天の月の光と海上の漁り火とが上下に照り合う、韓亭の夜の美しい景色がとらえられている。詞書にある月光の美しさを、漁り火との取り合わせによって描き出している。
 詞書によれば、筑前国志麻郡の韓亭に着いて三日間船を泊めていた時、夜の月の光が白々と照りわたり、その美しさに向かって旅の思いに胸がふさがり、それぞれが心を述べて作った六首の一つである。韓亭は現在の福岡市西区宮浦付近とされ、筑紫を離れて外洋へ向かう前の港であった。本歌には左注がなく、作者の名は記されていない。

 初句「ひさかたの」 「天」「月」などにかかる枕詞である。
 二句「月は照りたり」 「たり」は存続の助動詞で、月が照っているの意。ここで切れる二句切れである。
 三句「暇なく」 「暇」はすきま、間のことで、すきまなく、絶え間なくの意である。
 四句「海人の漁りは」 「漁り」はここでは漁り火のことである。
 結句「灯し合へり見ゆ」 「合へり」は互いに灯し合っているの意、「見ゆ」はその光景が見えることを表す。八音の字余りである。

いとま:すきま、間
いざり:漁、ここでは漁り火
出典
万葉集
前の歌
ぬばたまの夜渡る月にあらませば 家なる妹に逢ひて来ましを
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風吹けば沖つ白波畏みと 能許の亭にあまた夜ぞ寝る