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風吹けば沖つ白波畏みと
能許の亭にあまた夜ぞ寝る

歌の意味
風が吹くと沖の白波が恐ろしいので、能許の港で、幾夜も寝ることだ。
鑑賞
巻第十五 遣新羅使人歌 3673

詞書は前の歌に続き「筑前国志麻郡の韓亭に到りて、船泊まりして三日を経。時に夜月の光、皎々として流照す。たちまちにこの華に対して旅情悽噎す。おのもおのも心緒を陳べて、いささかに裁る歌六首」
 風が吹くと沖の白波が恐ろしいので、能許の港で幾夜も船を出せずに寝ていると詠んだ歌である。詞書に三日間船を泊めたとあるように、外洋へ出る前の港で風待ちを強いられる旅の停滞が表されている。新羅へ向けての玄界灘を前にした、荒波への恐れがうかがえる。
 詞書によれば、筑前国志麻郡の韓亭に着いて三日間船を泊めていた時、夜の月の光が白々と照りわたり、その美しさに向かって旅の思いに胸がふさがり、それぞれが心を述べて作った六首の一つである。韓亭は現在の福岡市西区宮浦付近とされ、筑紫を離れて外洋へ向かう前の港であった。本歌には左注がなく、作者の名は記されていない。

 初句「風吹けば」 風が吹くといつもの意で、已然形に「ば」がついた条件である。
 二句「沖つ白波」 沖の白波で、外洋の荒波を指す。
 三句「畏みと」 「畏み」は形容詞「畏し」の語幹に「み」がついた形で、恐ろしいのでの意。「と」は理由を示す。
 四句「能許の亭に」 「亭」は「とまり」と読み、船の泊まる港のことで、能古島に向き合う韓亭を指す。
 結句「あまた夜ぞ寝る」 「あまた」は多くの意。「ぞ」は係助詞で、結びは連体形「寝る」となる係り結びである。

とまり:船の泊まる港
出典
万葉集
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ひさかたの月は照りたり暇なく 海人の漁りは灯し合へり見ゆ
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