天飛ぶや雁を使に得てしかも
奈良の都に言告げ遣らむ
- 歌の意味
-
空を飛ぶ雁を使いとして得たいものだ。そうすれば、奈良の都に言づてを送ってやろう。
- 鑑賞
-
巻第十五 遣新羅使人歌 3676
詞書は前の歌に続き「引津の亭に船泊まりして作る歌七首」
空を飛ぶ雁を使いにして、奈良の都に便りを届けたいと願った歌である。雁が便りを運ぶという考えは、漢の蘇武が雁の足に手紙を結んで消息を伝えたという故事に基づくとされ、旅先から家への便りを託すものとして雁が詠まれている。熊毛の浦で詠まれた本巻の第三千六百四十首の結句「言告げやらむ」と同じ結句で、都へ便りを託したいという願いが繰り返されている。
詞書によれば、引津の亭に船を泊めて作った七首の一つである。引津は筑前国志麻郡の港で、現在の福岡県糸島市志摩の引津湾付近とされる。本歌の作者の名は記されていない。
初句「天飛ぶや」 空を飛ぶの意で、「雁」にかかる枕詞である。
二句「雁を使に」 雁を使者としての意で、雁が便りを運ぶという故事を踏まえている。
三句「得てしかも」 「てしか」は願望を表し、「も」は詠嘆で、得たいものだの意。ここで切れる三句切れである。
四句「奈良の都に」 一行の家族の住む平城京を指す。
結句「言告げ遣らむ」 「言告ぐ」はことづける意で、言づてを送ってやろうと結ぶ。本巻の第三千六百四十首と同じ結句である。
あまとぶや:「雁」にかかる枕詞
つかひ:使者、便りを運ぶ者
ことつぐ:ことづける、伝言する
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
沖つ波高く立つ日にあへりきと 都の人は聞きてけむかも
- 次の歌
-
秋の野をにほはす萩は咲けれども 見る験なし旅にしあれば