妹を思ひ寐の寝らえぬに秋の野に
さを鹿鳴きつ妻思ひかねて
- 歌の意味
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妻を思って眠ることもできずにいると、秋の野で牡鹿が鳴いた。妻を恋しく思う心に堪えかねて。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3678
詞書は前の歌に続き「引津の亭に船泊まりして作る歌七首」
妻を思って眠れずにいると、秋の野で牡鹿が妻を恋しく思う心に堪えかねて鳴いたと詠んだ歌である。妻を求める鹿の声に、同じく妻を思う自分の姿を重ね、人と鹿とがともに妻を恋う夜を描いている。初句と二句は、筑紫の館で詠まれた本巻の第三千六百六十五首と同じであり、眠れぬ夜に聞く声が、そちらでは雁、こちらでは鹿となっている。
詞書によれば、引津の亭に船を泊めて作った七首の一つである。引津は筑前国志麻郡の港で、現在の福岡県糸島市志摩の引津湾付近とされる。本歌の作者の名は記されていない。
初句「妹を思ひ」 妻を恋しく思っての意で、六音の字余りである。
二句「寐の寝らえぬに」 「寐」は眠り、「らえ」は可能の助動詞「らゆ」の未然形で、眠ることができないのにの意である。本巻の第三千六百六十五首と同じ二句である。
三句「秋の野に」 秋の野にの意で、鹿の鳴く場所である。
四句「さを鹿鳴きつ」 「さを鹿」は牡鹿、「つ」は完了で、牡鹿が鳴いたの意。ここで切れる四句切れである。
結句「妻思ひかねて」 「かぬ」は堪えきれない意で、妻を恋しく思う心に堪えかねての意。鹿の心を述べつつ、作者自身の心を重ねている。
い:眠り
さをしか:牡鹿
おもひかぬ:思いに堪えきれない
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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秋の野をにほはす萩は咲けれども 見る験なし旅にしあれば
- 次の歌
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大船に真楫しじ貫き時待つと 我れは思へど月ぞ経にける