大船に真楫しじ貫き時待つと
我れは思へど月ぞ経にける
- 歌の意味
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大船に櫂をたくさん取り付けて、船出の時を待っているのだと私は思っていたが、月が過ぎてしまった。
- 鑑賞
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巻第十五 遣新羅使人歌 3679
詞書は前の歌に続き「引津の亭に船泊まりして作る歌七首」
大船に櫂をそろえて船出の時を待っているつもりだったが、いつの間にか月が過ぎてしまったと嘆いた歌である。風待ちを重ねるうちに、帰国を約束した秋の月日がむなしく過ぎていく焦りが表されている。上の句「大船に真楫しじ貫き」は、古歌として誦された人麻呂の七夕の歌、本巻の第三千六百十一首の上の句と同じであり、天を渡る月の船と、出航できずにいる地上の船とが対照をなしている。
詞書によれば、引津の亭に船を泊めて作った七首の一つである。引津は筑前国志麻郡の港で、現在の福岡県糸島市志摩の引津湾付近とされる。本歌の作者の名は記されていない。
初句「大船に」 一行の乗る大型の官船である。
二句「真楫しじ貫き」 「真楫」は船の左右両舷にそろえた櫂、「しじ貫く」はたくさん取り付ける意で、出航の準備を整えたさまである。本巻の第三千六百十一首と同じ句である。
三句「時待つと」 船出によい潮や風の時を待つとの意である。
四句「我れは思へど」 逆接の「ど」により、そう思っていたけれどもと下へ転じる。
結句「月ぞ経にける」 「ぞ」は係助詞で、結びは連体形「ける」となる係り結びである。月が過ぎてしまったことだと嘆いて結ぶ。
まかぢ:船の左右両舷にそろえた櫂
しじぬく:たくさん取り付ける
ふ:経る、時が過ぎる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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妹を思ひ寐の寝らえぬに秋の野に さを鹿鳴きつ妻思ひかねて
- 次の歌
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夜を長み寐の寝らえぬにあしひきの 山彦響めさを鹿鳴くも